今回は奥田民生「休日」を取り上げたいと思います。ユニコーン解散前後で、ソロとしては初のシングル。精神的にしんどそうな時期で、歌にもそれが強く表れているように思います。公式の音源があったので、ぜひ聞きながら読んでみてください。
1番Aメロ
後年の野太い発声ではなく、ユニコーン時代のまだ少し細めというか、少し締まっているような発声に聞こえます。リゾート的、休日的なモチーフは奥田民生のソロに特徴的ですが、この曲では、立ち直り的なポジティブな意味合いとして用いられているというより、純粋な現実逃避でしかない形なのが特色ではないでしょうか。
とはいえ、それがどんな場所なのか具体的に像を結んでおらず、アバウトなイメージが語られていきます。
1番Bメロ
ah、のくたびれ感の強さよ、という感じです。リゾート的なモチーフが、明確につらいこと(人間関係?)からの逃避として用いられていることがわかります。
1番サビ
発声としてはAメロからあまり変わらず、伸びやかではない、どこか苦しそうな声です。全然解放感のないサビでいいですよね。リゾート的なものを語りつつ、現実から逃れられていない状況であることを暗示しているようです。サビ終わりでは伸ばしが濁った歌声になっていますが、そのまま採用されています。この辺も意図的かもしれませんね。
2番Aメロ
他人から逃避し、自分という存在も投げ捨てられる場所として歌われています。
2番Bメロ
眠りから幻想的な間奏を経てラスサビへ向かっていきます。眠りも、ソロでこの後展開されていく休日的なモチーフにはあまりない要素かもしれません。眠りのニュアンスからは、ユニコーン時代の「いかんともしがたい男」を思い出します。
ラスサビ
引き続き苦しそうな声のまま、リゾート的な場所から一生戻ってこない夢を見ています。この曲で鳥肌が立つところです。最後の歌詞も含め、よほど他人が嫌になっているようですね。
ずっとどこかこもったような音像なのも含め、非常にしんどさを感じます。そう考えると、イントロとアウトロで使われるsus2のコードも、通常のメジャーコードに比べどこか閉塞的で、効果的に思えてきますね。
奥田民生は歌がうまい?
この曲においては、奥田民生は伸びやかだったり技巧的だったりする、いわゆる「うまい」歌を歌っているわけではありませんが、この曲にとてもふさわしい歌になっていると思います。シンガーソングライター的に見れば、心境と曲と歌が一体化しているのだ、と捉えられそうですが、曲作りやレコーディングに当たってそういう自分を客観視しつつ、歌を入れていった可能性も否定できません。

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