今回は井上陽水「真珠」を取り上げたいと思います。美しいけどなんだかよくわからない、けど美しい曲で、かなり好きです。公式の音源があったので、ぜひ聞きながら読んでみてください。
1番Aメロ
まさに井上陽水の声としてイメージする声です。リバーブがかなり強めにかかった状態で、何を言っているのかよくわからない歌が語りかけられていくので、そうなのかな、と思いながら聞いていきます。
1番Bメロ
語りかけから独白のような調子になり、夢想的なシチュエーションと光景が歌われていきます。夢想的なことを歌っている時の井上陽水の歌は、滑らかで豊かな歌声と相まって、本当に説得力がありますね。この曲でも、どこか浮世離れしているような歌声と、遠くを見るような節回し(特に強弱)が有効に使われています。アレンジも含め、浮遊感があって、地に足のついていない感じが気持ちいいです。いや、うまいな、それにしても。歌い方がニュアンスフルで、変幻自在です。変幻自在と言っても歌声をあからさまに変えるのではなく、ニュアンスにおいて自在に変化させていく方ですね。
2番Aメロ
「だよ」とか「かな」とか言われてもな、という感じの内容ですが、なんか美しいし、そういうもんかな、とも思い始めます。
2番Bメロ
永遠や恋がモチーフの1つですね。個人的にあまりイデア的なものがよくわからないのですが、なんかちょっと身を委ねてもいいかなと思える大きさがこの曲にはある気がします。なんかベースの音量多少大きくなってきた?余白を大きく活かして、そこに井上陽水の声のこだまが聞こえる……。
間奏
このくだりすごい海っぽいですよね。アンダーザシーとかっぽい。ちょっと過剰でウソっぽいぐらい夢想的ですね。
ここではベースの強めの音色が印象的です。改めてイヤホンで聞いていると、かなり低音が強いことがわかります。昔聞いた印象だともっと淡いイメージだったのですが、この低音の感じも含めると、自分が深海にいて、海の大きなたゆたいに揺られているような、そこに陽光がキラキラとしているような、そういうイメージも湧いてきます。
3番Bメロ
深いたゆたいの中に潜っていく曲想と、深海の暗闇の中へとイマジネーションが降りていく歌詞が呼応していきます。美しくて鳥肌が立ちます。
井上陽水は歌がうまい?
井上陽水といえば、よくモノマネされるような特徴的な声と歌い方をイメージする人も多いでしょう。イロモノ的な捉えられ方もあるかもしれませんが、この曲に表れているような夢想的な表現にとても合っている歌い方だなと思いますし、そもそも表現力の豊かさをとても感じますね。若い頃はもっと正統派の発声と歌い方なのですが、時系列で追って聞いていると、その歌が後年深められていってこの歌い方になっていく、というのがなんとなくわかって面白いので、ぜひやってみてください。

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