テレサ・テン「別れの予感」です。わかりやすくダイナミックな曲ではありませんが、切々とした感情が比較的抑えたトーンからひしひしと伝わってきて、本当に大好きな曲です。
音源で聞いていると、高音を出していてもあまりハイが抜けてこない感じの声質に感じます。それが、歌の内容とマッチしていて、とても好きです。公式の音源があったので、こちらをぜひ聞きながら聞いてみてください。
1番Aメロ
すごく抑えたトーンの歌い方ですが、すでに切々とした気持ちが伝わってくるのがすごいです。声の美しさと、朴訥で本当の感情を込めているような歌い方が本当にいい。歌詞の内容としてはもっと激しく歌ってもいい内容にも思えるのですが、やはりこの歌い方が正解だと思います。
1番Bメロ
ここで曲調が盛り上がり、声も徐々に伸びやかになっていきますが、やはり歌い方も声もしっとりしています。自分の愛情を率直に伝えて、問いかけている感じもありつつ、ベクトルが自分の内面に向かっている感じがとてもいい。
1番サビ
Aメロのメロディに戻りつつ、最後にサビとして盛り上がります。この曲を聞いていてすごいなと思うのが、サビの一番盛り上がるところが否定形になっているところです。否定神学的なものすら感じます。曲のテーマとしても、別れという(予感的な)地点から、この愛情の深さや強さを表現する形になっていて、サビの構造と呼応しているような気がしますね。そして、自分の全力の愛を伝えつつ、それが「別れの予感」に結びついている、という。本当にいい曲。
2番Aメロ
静かなトーンに戻り、切々した気持ちが背景とともに歌われていきます。本当に美しい。語尾が消え入るような歌い方と、声質と曲調が完全にマッチしていて、とにかく美しい。
2番Bメロ
今度の盛り上がりでは、彼女が自分の人生をどのように決心していたか、その内容が歌われていきます。いまの時代ではなかなか受け入れられない内容かもしれませんが、こう思っていた女性がいた時代があった、ということのリアリティを伝えてくれる表現です。
2番サビ・ラスサビ
同じメッセージが繰り返される2番サビとラスサビです。歌詞が雄弁でないのがいいですね。余計な言葉が言えるわけでもない。でも、自分の気持ちを表現したい、だから繰り返すしかない、というのが伝わってきます。全体を通して本当にいい曲。大好きです。
テレサ・テンは歌がうまい?
歌がうまい?もなにも、誰がどう聞いてもうまいとは思うのですが、高音をバンバン出して聞き手を圧倒するような歌い方というよりは、歌詞に寄り添ってしっとりと歌うスタイルだと思います。個人的にはこういったスタイルのアーティストがとても好きです。

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